走ってないのにシリーシーズン、2021年のドライバー移籍事情
野球などのスポーツで冬季のオフシーズンに選手の移籍が話題になることを「ストーブリーグ」なんて言い方をしますが、F1にも「シリーシーズン」(おかしなシーズン)と呼ばれる移籍に関するアレコレが毎年話題になります。
特にF1は各チーム2名しか選手がいないので次の年にメンバーが一変することもしばしば。
コロナウイルスの影響で延期となっているF1の2020年シーズンですが、なんとシーズン開始前にシリーシーズンが始まってしまうという異例の事態が起こっています。
今現在確定した2021年のドライバーチェンジについてその要因や期待、最後にシーズンの見どころを考察していきます。
2020年6月現在の2021シーズンのドライバー移籍情報
1つ目のピースとして4度の世界チャンピオン経験者のベッテルがフェラーリ離脱を発表。
離脱の原因として噂されているのは主に以下の3点です。
ベッテルのチームメイトとなったルクレールは2019年シーズンにフェラーリのお膝元、イタリアGPで優勝。(さながらあの熱狂は甲子園球場で阪神が優勝を決める様な感じだと思います。)チーム・ファンともにイタリアGP以降はガラッとルクレールをエースとするムードになりました。
②チームからの単年契約・年俸ダウンの提示
ベッテルはF1レーサーとしては珍しくマネージャーを置かずに自身のマネジメントを行っています。
交渉の中でフェラーリは複数年ではなく単年の契約を提示、ベッテルが最後まで条件を飲まず交渉は決裂したと噂されます。
年俸に関しても大幅ダウンの提示となった様で、ルクレールのセカンドドライバーとも取れるチームの扱い、年俸金額・条件ダウンでの契約更改に対してベッテルは移籍を決めたのでしょう。
その他、あくまで噂ですが個人的には非常に興味深い噂がこの説です。
ベッテルはマシンの設計など技術的な知識・興味が旺盛なドライバーとして知られます。
サーキットではレースや予選の後に止めてあるライバルチームのマシンを凝視して自らのマシンとの違いを探ることもしばしば。
2019年シーズンのフェラーリマシン「SF90」は後半にかけて競争力が改善、その後レギュレーション違反の疑惑が持ち上がり、第19戦アメリカ以降に出された技術指令以降、マシンの競争力は急速に減衰しました。
チームはあくまでも違反については否定を続けておりますが、ベッテルがこの時にマシンの不正を知っており、不正を隠そうとするチームとの間に軋轢が生じたという可能性があります。
「現役レーサーで一番イイ奴」とも言われるベッテルですから、あながち間違いではないとも考えられます。またフェラーリ離脱の情報はベッテル自身がリークしたという噂もあり、それが本当だとしたらチームと決裂し、自身で関係を絶ったという風にも取れます。
ベッテル離脱の情報の直後、マクラーレンからサインツがフェラーリへ移籍するという情報がオフィシャルで発表されました。
もともとフェラーリのドライバー候補には後述のリカルドとサインツ、そしてフェラーリの育成ドライバー出身のジョビナッツィが挙げられていましたが、シートを射止めたのは元レッドブル育成のサインツでした。
サインツといえば2019シーズンではルーキーのランドノリスとの相性が良く、少し年の離れた兄弟の様な間柄が話題でした。
(ランドはルクレールとのシムレースの中で「よくも僕のチームメイトを盗ったな!」とチャット上でコメントしています。)
またブラジルGPでの判定による表彰式終了後の初表彰台や、無線で口ずさむシャーデーの楽曲「smooth operator」の一節など成績・キャラクターともに2019年にブレイクしたレーサーです。
マクラーレンをエンジンサプライヤーであるルノーに勝るコンスト4位に導いた活躍が評価された移籍劇と言えます。
・ダニエルリカルドがマクラーレンへ移籍
さて、フェラーリドライバーの有力候補と言われていたリカルドですが、2021よりサインツが抜けるマクラーレンに移籍することが発表されています。
リカルドはイタリア人?
そもそもリカルドがフェラーリ移籍の有力候補と言われていたのはその実力に加え「イタリア系である」ということも一因と言われています。
リカルドはオーストラリア出身のドライバーとして知られますが、両親はイタリア人。
どことなくはっきりした顔立ちや、性格も明るくおおらかなイタリア人に見えます。
名前もダニエル・リチャルドと呼ばれることがあり、イタリア人っぽさがありますよね。
(ちなみにマックスフェルスタッペンはこの移籍ニュースが出る直前にメディアのインタビューで「次のフェラーリドライバーはイタリア語っぽい名前の奴かスペインっぽい名前の奴かどっちだと思う?」と聞かれ「スペイン系だね!」と答えています。)
リカルドとルノーの関係
リカルドはレッドブル時代からルノーエンジンのマシンにキャリアを通して長く乗っています。
一方でルノーエンジンの信頼性のなさには度々泣かされており、昨シーズンはミスなく走りきった日本GPでのポイントがチームの車両規定違反により剥奪されるなど決してチームやPUを含むマシンと相性が良い印象が感じられませんでした。
マクラーレンは2021年シーズンからメルセデスエンジンを使用することが発表されていますが、その初年度に巻き返しを図るつもりなのでしょうか。
ライバルチームが熟成されたレギュレーションの中で仕上げるマシンに対し、マシンに大きな変革があるチームは不利になりそう、とも考えられますが、チャンピオンエンジンであるメルセデスを使用できることに加え、マクラーレンにはテクニカルディレクターにエンジン載せ替え職人とも呼ばれるジェームズ・キーがいることも好材料と言えます。
世界3大レースの1つであるモナコGPウィナーでもあるリカルドの2021年以降の活躍に期待したいです。
2020年の見どころ
・ベッテルのフェラーリラストイヤー
ベッテルはフェラーリで同郷の先輩シューマッハの様にチームを引っ張りライコネン以来のフェラーリチャンピオンになれるのか。
2021年の見どころ
ルクレール加入以降同士討ちやチームオーダーでの争いが絶えないフェラーリ。
かつてグランプリを席巻したマクラーレンメルセデスのタッグが帰ってくる。
メルセデスがF1を撤退しエンジンサプライヤーとして残る、という噂がコロナウイルスによる不況の影響で加速する中、かつてベッテルを対戦成績で上回ったリカルドはチャンピオン争いに絡むことはできるのだろうか。
今後のドライバー情報についても注目して参ります。
まずはオーストリアで開幕予定の2020年シーズンが待ち遠しいですね。